岐阜・高賀渓谷──清流と巨岩が織りなす神秘の景勝地
岐阜県関市の奥地、洞戸高賀（ほらどこうが）地区に広がる「高賀渓谷」は、まさに自然が長い時間をかけてつくりあげた芸術品のような場所です。
澄んだ水が流れる清流「高賀川」に沿って、大小さまざまな岩が点在し、まるで日本の秘境を訪れたかのような錯覚すら覚えます。
渓谷に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、川底まで見える透明度の高い水と、それを包み込むような白く滑らかな巨岩。水音は心地よく、耳にやさしく響き、自然のリズムが身体中に染み渡っていきます。
この清らかな川と岩の風景は、訪れる季節によってまったく違った表情を見せてくれます。春の芽吹き、新緑がまぶしい初夏、山々が鮮やかに染まる秋、そして雪に包まれる厳かな冬。四季折々の美しさが詰まったこの地は、まさに自然の宝庫です。
妖魔退治の伝説と高賀神社
高賀渓谷の周辺は、ただ美しいだけの場所ではありません。ここには古くから伝わる「妖魔退治」の伝説があり、その舞台となったのが近くに鎮座する高賀神社です。
高賀神社は平安時代の天暦年間に創建されたと伝えられ、古くから人々の信仰を集めてきました。中世には、妖魔や疫病から人々を守る霊験あらたかな神社として崇敬を集め、多くの参拝者が訪れたとされています。
神社の境内には、今もなお神秘的な空気が漂い、まるで時が止まったかのような静けさ。大木の間から差し込む陽の光が、幻想的な雰囲気を作り出し、訪れる人々を神聖な空間へと誘います。
名水「高賀の森水」
高賀神社の近くには、自然の恵みである「高賀の森水」が湧き出しています。
これは、1億年以上前の古い地層から湧き上がるとされる名水で、その美味しさと柔らかさから、遠方から汲みに訪れる人も後を絶ちません。かつてオリンピック金メダリスト・高橋尚子さんがトレーニング中にこの水を愛飲していたという逸話もあり、地元では広く親しまれています。
名水の湧き出る水場は、山道の途中にあり、静かな森の中にたたずむ「高賀神水庵」に設けられています。空のペットボトルやポリタンクを持って訪れる人の姿が絶えず、地元の人々はもちろん、観光客にも人気のスポットとなっています。
周辺の見どころ
高賀渓谷を訪れたなら、周辺のスポットにもぜひ足を延ばしてみましょう。
まず外せないのが「モネの池」。本物のモネの絵画のように、水中のスイレンと鯉が織りなす幻想的な光景が広がる池です。透明な水に、赤や白の錦鯉が泳ぎ、光の加減によってまるで絵画の世界が現実になったかのような錯覚を味わえます。
また、道の駅「ラステンほらど」もおすすめです。地元産の新鮮な野菜や特産品を販売する直売所があり、軽食コーナーでは朴葉寿司や鮎の塩焼きなど、地元グルメを手軽に楽しむことができます。ドライブの途中の休憩にもぴったりのスポットです。
さらに「洞戸円空記念館」では、江戸時代の僧であり木彫り仏師としても名高い円空の作品や関連資料を見ることができ、文化的な一面にも触れることができます。
自然と歴史が調和する癒しの空間
高賀渓谷は、単なる自然の景勝地ではありません。歴史と伝説、そして人々の信仰と暮らしが、静かに息づいている場所です。
渓谷を歩き、神社に参拝し、名水を汲む──この一連の体験は、どこか懐かしく、そしてどこか特別な感覚を呼び起こしてくれることでしょう。
喧騒から離れ、心と身体をリセットしたいとき、自然の中に身をゆだねたくなったとき、ぜひこの地を訪れてみてください。きっと、新たな自分を発見できるはずです。
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