はじめに

岐阜県関市洞戸高賀地区の山あいに、ひっそりとたたずむ「高賀神社」。
この神社は、平安時代の天暦年間、今からおよそ千年以上前に創建されたと伝えられ、古来よりこの地に住まう人々の信仰を集めてきた、由緒正しき神社です。
かつてこの地には「妖魔」が棲みつき、人々を苦しめていたという伝説が残っています。その妖魔退治のために、都から勅命を受けた武士たちが派遣され、激しい戦いの末にこれを退けました。そして、その感謝と鎮魂のために建立されたのが、この高賀神社だとされています。
この地に足を運ぶと、静寂と清らかな空気に包まれ、まるで時間が止まったかのような感覚になります。参道は緑深い山林に囲まれ、鳥居をくぐるたびに空気が変わるのを感じるでしょう。
神秘的な空間に広がる荘厳な境内

境内には、古木が生い茂り、苔むした石段がゆるやかに続いています。
本殿は厳かな雰囲気を湛え、長い年月を経た風格を感じさせます。そのたたずまいからは、単なる観光スポットではなく、今なお生きている“祈りの場”であることが伝わってきます。
拝殿の奥には、神秘的な雰囲気を漂わせる「御神体山」が控えており、その山自体が古来より信仰の対象とされてきました。山の奥にある「高賀山」は、修験道の場としても知られ、険しい山中での修行が行われていた場所です。
また、境内にはかつての修験者たちが使っていたとされる「護摩壇跡」なども残っており、信仰の歴史が静かに語りかけてきます。
高賀神社と円空のつながり

高賀神社は、江戸時代に活躍した木彫り仏師・円空とも深い縁があります。
円空はこの地を何度も訪れ、高賀山で修行を行いながら、多くの仏像を彫り上げたと伝えられています。高賀神社の近くには、彼の足跡をたどることができる「洞戸円空記念館」もあり、その業績と精神性を今に伝えています。


名水「高賀の森水」との関わり
高賀神社の近くから湧き出す「高賀の森水」は、まさにこの神域が育んだ自然の恵みです。
この名水は、地層深くから長い年月をかけて湧き出す清らかな水で、非常にまろやかで飲みやすく、地元の人々に長く愛されています。
神社とこの水は切っても切れない関係にあり、古くは神前に供えられる「神水」として用いられてきました。今でも多くの参拝者が水を汲みに訪れ、「霊水」として大切に扱っています。
周辺の観光地
高賀神社を訪れたら、ぜひ周囲の観光スポットにも足を延ばしてみてください。

まず「高賀渓谷」は外せません。高賀川の清流に沿って広がるこの渓谷は、澄んだ水と美しい岩肌、深い緑が調和した絶景スポットで、自然散策にもってこいの場所です。

また、「モネの池」は、まるで印象派の絵画のような幻想的な風景が楽しめる池。透明な水にスイレンが浮かび、赤や白の錦鯉がゆらゆらと泳ぐ姿は、まさに異世界のような美しさです。
そして「道の駅 ラステンほらど」では、地元産の野菜や山の幸、特産品を購入したり、手軽に岐阜の味覚を楽しんだりすることができます。休憩を兼ねて立ち寄るのに最適なスポットです。
心を整える祈りの時間を

現代の忙しさに疲れた心を癒し、静かに自分と向き合いたいとき、自然の中にある神社は特別な場所です。
高賀神社は、見た目の華やかさこそありませんが、その代わりに、訪れた人の心を静かに整えてくれるような“気”があります。
都会の喧騒から離れ、山道を抜けてたどり着いたとき、きっとあなたも何かを感じ取るでしょう。
高賀神社は、過去から未来へと続く祈りの道、その中間地点に静かに佇む、神聖な場所なのです。
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